32.秘密のこと

  • 2019.06.12 Wednesday
  • 17:10

 実はてのひらのメンバーの中で赤シャツの秘密を知っていた者が二人いた。時を八か月前に戻そう。昨年6月あたりの何かのコンパのあとだったように思う。

 

 コンパが終わって帰りがけ、お酒の酔いを醒ますため帰り道の喫茶店に寄った。そこには、アサノ氏とスルメがいた。三人で、このサークルのことを楽しいね、人形劇っておもしろい部活だねぇ、ずっといっしょにやっていきたいよねぇ…などと褒めて話し合っていた時のことだ。何気なしに、こんな会話になってしまった。

「すごく楽しい部活なんだけれど、ボクは立場がみんなとちょっと違うから長く続けられないかも…」とつい口をすべらせた。

スルメ「立場が違うってどういうこと?何がちょっと違うの?」

すかさずアサノ氏が「ときどき、2年や3年の講義受けてるだろ?」

スルメ「赤シャツって私たちと同じ1年生だよねぇ?…」

返答に困った「いや、そういうことじゃなくて、ちょっと立場がみんなと同じにできない状況もあったりして…」

するとスルメが「同じにできないってどういうこと?そういえば、赤シャツが名大の校舎に入っていくの、見たことあるよ!」どんどん突っ込まれてしまう。「赤シャツってホントは何年生?名大にも行ってるみたいだし、何か秘密があるの?もしかして…」

赤シャツ「・・・・・・・・・・」

 もしかして…とそこまで追い詰められてとうとう何も言えず、無言になった。そのとき、この楽しい仲間たちと別れのときが来るかも、自分はニセモノの存在なのだと思ったとき、急に目に涙が溢れてきた。

 突然、男が目に涙をためるのだ。スルメもアサノ氏もびっくりして顔を見合わせた。赤シャツは小さな声で「ホントは南山の学生じゃない!このことは絶対みんなに言わないで!」と告白した。

 

 2人はずっとこのことを秘密にしてきてくれてきた。ありがたかった。スルメはそのことを知ってから、少し離れた位置からずっと見守るようにしてくれた。そして優しくいたわるように接してくれていたように思う。空虚なニセ学生とホントの自分の両方を知ってくれてて安心できる唯一のつなぎ橋が彼女だった。

 

 彼女との思い出をもう一つ。当時、人形劇論で仲間同士で熱く語り合うことが多かった。あれは2学期のごろだったか合宿で熱い人形劇論をヨー君やユキコやボスらと戦わせて、議論上赤シャツが孤立したように見えたことがあった。その後、布団を敷いてみんなでごろ寝をした。雑魚寝で布団に入ると隣はスルメだった。

 消灯後、うわ布団とうわ布団の間で手と手が触れ合ってしまった。手を引っ込めようとするとその手がこちらの手を握り返してくる。”アサノ氏がいるのに…”と思いながらも、その手をそのままに任せた。その手はそっと腕の方へいたわるように撫でてくる。議論で孤立したのを心配して慰めようとしてくれたのか、こちらもドキドキしながら手をさするように撫で返す。色の白い滑らかな細い手だった。暖かなてのひらのぬくもり… そこには異端の赤シャツをいたわるスルメの気持ちが感じられた。その手の先には、てのひらの仲間みんなの愛情が拡がっていた。

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