30.人形劇「杜子春」

  • 2019.06.10 Monday
  • 17:30

 教育大に掲示されていたポスタ―、人形劇団の公演は中区役所の市民ホールで行われると書いてあった。

 家で叱られた後も相変わらず南山に通っていたのだが、てのひらの部室でみんなとしゃべっていた後で公演の当日に中区役所に一人で見に行くことにする。

 

「杜子春」という芥川龍之介 原作の人形劇版だ。動作、人形の作り等は少々雑な感じがした。だがストーリーの後半、様相が一変する。原作は杜子春が母親の地獄での様子を見るに見かねて約束を破って声を出してしまい人間らしさに気づいてハッピーエンドで終わるはずなのだが、この劇で杜子春は母を助けるか迷ったあげく母に声かけせず我慢してしまう。母親は地獄に落ち杜子春は悲しい大金持ちになってしまう悲劇の物語で幕が降りる。

 人間の「さが」を考えさせられる大人向けの劇であった。当時は南山の人形劇と福祉大、名大などでなんとなく風潮が違うようにいろいろな考え方の文化のようなものがあった。児童文化に裏打ちされたもの、児童と離れて大人向けの人形を扱うもの(例えば文楽やパペットマメットなど)、政治色的な色合いを深めるもの、新しい表現を追い求める芸術的なもの…いろんな種類の劇があったということは、それだけそのときの劇の文化活動が各大学とも盛んであったといえる。

 

 後に知ることになるのだが、教育大の人形劇部は2つに別れていて、ひとつは児童文化研究会(民青といって政治的には少し左翼系で子供向けの人形劇)、もうひとつは人形劇団「むう」(子供だけにとどまらず、大人向けも含めた人形劇)。自分が南山に行っている間にいろんな騒動があり、ふたつの部に別れたという。

 

 見終わった後で、栄の歩道を歩きながら考えた「自分はこれからどうなるんだろう。このままみんなと一緒に南山で過ごすのか、やっぱりもとの大学にもどるのか…」

 心の空洞がまた広がり始め、吉田拓郎の”どうしてこんなに悲しいんだろう”の曲が浮かんできて、口ずさみながら家路についた。

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