23.天国と地獄

  • 2019.06.03 Monday
  • 16:30

 サンゴ礁の海は想像以上にきれいですばらしい。知っての通り、珊瑚はそんな深いところではなく、水深1〜2mほどのところにあるので、身体を伏せればもうそこは天国の別天地。波間にプカプカ浮かんで顔を海水につければ、きれいな珊瑚と魚たちと戯れることができる。ずっと背を南国の太陽の光に当てたまま、顔と胸と腹だけ海水につけていたことになる。

 ずいぶん時間が立ってからヌーボーが「なんかヒリヒリするなぁ。僕もシャツを着て泳ごう」…しかし、それはもう手遅れだった。2時間ほど遊んだだろうか。海岸にあがり、次の小学校の宿泊地へ向かった。この後、ほとんどのメンバーが地獄を見ることになる。

 

 次の宿泊地へ着くやいなや、ヨー君が背中が痛いと言い出す。同じように、オオマサ、チビ太、ユキコ、ヌーボーもシャツを脱ぐと背中が日焼けして真っ赤だ。ここは、南国の奄美大島、紫外線の量が半端ではない。いたずら半分で彼らの背中をパチンと叩くとうぎゃぁーーっと飛び上がるほど痛がる。笑って追いかけて、逃げ回っていたが、その日焼けの痛がる様子がだんだん尋常ではなくなってきた。

 そのうちに、学校の休息所でみんなうつぶせになって寝込んで、「うううぅぅぅぅーっ あぁ、うぅぅぅーーーーーーっ」とうなり声を出す始末。自分も首筋、手の甲あたりはヒリヒリしたが大したことはない。その時点で生きていたのは、奄美のブッチャーとシャツを着て泳いだマキコと赤シャツの3人だけ。

 南国の太陽を甘く見ていたのだ。その後、学校の休息所は地獄の修羅場と化していく。過度の日焼けで、皮膚から水泡ができ始める。それが時間が立つほどにどんどん大きく膨らんで成長していく。どちらかというとユキコは色黒で軽いようにも見えたが、もともと色白のヨー君、オオマサ、チビ太は重症だった。休息所はそのまま宿泊所になり、一晩中メンバーのうなり声で夜は眠ることができなかった。

 翌日の朝、事態はさらに悪化していく。その水泡と水泡が合わさり、どんどん大きくなって背中全体が巨大な水泡と化していた。そのような水泡は後にも先にも見たことがない。

 そんな状態で人形劇公演をしなければならなかった。顔の黒子はつけたが、黒シャツは着ずに裸で公演…水泡の背中に何かが触れるたびに、ウゥゥーーッ アァァーーッ 声を押し殺して、うぅぅーっ あぁぁーっ…劇は進められて行った。

 公演後、マキコがみんなの水泡を針で手当てに入った。針を火であぶって消毒して水泡の皮を破いていく手術!水泡の水が飛び出て皮が剥がれ、ベロベロに剥けて見るも無残!男たちはヒィーッヒィーッと声を上げて逃げ回った。

 

フェリー 奄美大島から帰るときには多少おさまっていたが、フェリーの中で皮が剥がれてポロポロ床に落ちる。マキコに汚いねぇーっと言われながらも日焼けのやけどの痛みでも命があったことをみな喜んでいた。

 帰途のとき気がついたのだが、フェリーは沖縄から奄美、屋久島、種子島、鹿児島と寄港しながら乗客を運んでいく。寄港するたびに乗客の日焼けの色が薄くなっていく。やはり、南に行けば行くほど陽が強く肌が黒いのだ。奄美大島への巡回公演は、天国と地獄を兼ね備えており、そのあまりの過酷さに、その後どうやって名古屋にまで帰ってきたか、まったく記憶にない。

 

 人形劇部てのひらの暑い暑い夏も終わり、南山大学での生活は二学期を迎えることとなる。

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