2.人形劇入部

  • 2019.05.15 Wednesday
  • 17:46

 教大生の中にあって、一人異彩を放つ神野という人物がいた。彼は鹿児島大学に入学したのだが2年後にそこを辞めて愛教大に入り直したという。”大学紛争、全共闘の闘志” だったから、それで問題を起こしてこの愛教大に来たという。当時、60年安保から70年安保の余韻が少し残っていた時代のことである。

 自分にも経験があった。高校のとき、学生運動に影響を受け、大変な騒ぎを起こしたことがある。授業料値上げに対する反対で全国初、生徒会が授業ボイコット、ストライキを扇動し、学年代表の一人として理事長邸宅に押し入ったことがあったのである。当時高校生まで学生運動するようになったかと新聞やテレビで報道された。高校時代は左翼から右翼、そして、宗教関連まで手を伸ばし、大暴れをしたことがあったのである。

 

 全学連だった猛者のような神野が人形劇クラブに入り、女の子が喜びそうな人形を楽しそうに操っているのを目撃した。そんなミスマッチな様子が心の底にこびりついていた。もしかすると、人形劇には人を何か引きつけるもの、面白いものがあるのかもしれない…そんな予感が少し走った。

 

 新入生勧誘用の部屋に連れて行かれると他にもいた新入生は一人ひとり学部と名前と各自の自己紹介をさせられはじめる。”これは、ヤバイ! この中に本物の磯部 策司がいたら、経営学部の上級生がいたら…。こんなところに、のこのこ来るんじゃなかった!”

 一人ひとりの自己紹介が進んでいく。冷や汗が出てきた。「いっいそべ、さくし です…」小さな声で恐る恐る自己紹介をした。幸い、順番が後ろの方あり、本人はいなかったのでなんとかセーフ。しかし、そこには経営学科の学生が何人かいて、冷や汗が止まらない。

 前の大学ではアーチェリー部に入っており、新人戦で愛知県3位だった。アーチェリー部に入るのも頭をよぎったが、それに入ったら、教大生と大会で顔を合わせることもあり、新人戦で出会った選手が覚えているかもしれず、あっという間に自分の素性がわかってしまう。仕方がないのでとりあえず人形劇てのひらにエントリーすることにした。学生証を提示することになったり、大学に入部の手続きが必要になりそうなことになったら、即、退部するつもりでいた。

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