18.さらば赤羽根

  • 2019.05.29 Wednesday
  • 14:03

 翌朝、てのひらのみんなと顔を合わせると、ボスがものすごい顔をして「赤シャツ、どこっ行ってたの!」と言って怒られた。

 みんなからも「よかったぁ、無事で…。海の波にさらわれたかと思ったよ」とか、「心配してたんだよ。みんなで探しまわったんだよー!」そう言ってくれるが、どんな表情をして応えていいのかわからない。泣き笑いのような顔をしていると、マキコから「ダメじゃないの、みんなに心配かけて!」そう言って、頭をパコーンと叩かれた。

 

 すべての荷物を片付け、重いケコミなどは、骨組みを折りたたんで、再び緑のボロボロサンバーに乗せた。

 学校の先生にお礼に行く。当時は、昼間は日直の先生はいるのだが、夜は近くに用務員さんが学校近くに住んでて、それで先生の宿直はなくなっていた。用務員さんから先生の方に昨日の行方不明騒動が伝えられていたのかどうかわからないが、次のようなことを言われた。

「ここの用務員さんも、来年度はいなくなります。用務員さんがいたので、学校での宿泊は許可されてきましたが、来年度からは宿泊は許可がおりるかどうか…」

 学校というところは、少しでも騒動があると閉じてしまうことがある。騒動を起こして申し訳ない気持ちでいっぱいになった。てのひらは、数年間、この赤羽根の地で巡回公演を行ってきたらしいのだが、翌年からは長野の志賀高原、山之内町に移ることになる。

 

 巡回公演の途中からアサノ氏が普通車に乗って応援に駆けつけてくれていた。電車組と自動車組に分かれて名古屋に戻る。サンバー

 帰り道、行きと同じようにシオカラとサンバーを運転しながら帰ることになる。シオカラが、急に無口になってしまった赤シャツの横顔を見ながら、ポツリと言った。

「このサークルも夏が終ると辞めていくものが出てくるかもしれないなぁ…」

 そうかなぁと思いながら、シオカラの言葉に応えず無言で運転を続けた。

 ふいに吉田拓郎の”祭りあと”という曲が口から出た。

"祭りのあとの寂しさがぁ〜、いやでもやってくるのなら〜、祭りのあとの淋しさは〜っ、例えば女で紛らわし〜っ、もーぉ帰ろう、もう帰ってしまおう、今宵の酒を・・・飲む〜ぅまでは〜っ"

 紛らわす彼女もいない赤シャツとシオカラは、最初は口ずさむだけだったのが、だんだん大きな声になり、声を張り上げて歌いながら東名高速を走った。軽なのにアクセルめいっぱい踏んでスピードを出し、勢いあまって東名高速の出口を名古屋ICで出ればいいものを間違えて、次の出口の守山ICまで行ってしまった。

コメント
コメントする








    

calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< August 2020 >>

selected entries

categories

archives

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM