17.最後の夜 その2

  • 2019.05.28 Tuesday
  • 15:39

 花火を終えた後、校舎2階の教室の机を片づけて、この巡回公演全体の反省会を行った。

 主幹のヨー君が「なかなか、楽しい巡回公演でした。今後のためにいろいろ反省と意見を言って欲しい」と言って始まった。いろいろな反省がなされる中で、上級生の方からは初日から新入生たちの不慣れで公演が遅れたことが問題とされた。赤羽根の子供たちと遊び過ぎて、時間にルーズになったり、買出、調理、公演準備、片づけの役割分担もできず、お互いの役割を助合いがいい加減になっていた。そのとき、上級生の誰だったか、こっちに顔を向けて「子供と遊ぶのもいいけど、人形劇団なんだから、遅れてる仲間の仕事も手伝ったりしなきゃ。それじゃ部外者みたいだよ」

 上級生に悪気があったわけではない。けれど、部外者という言葉が忘れていた自分の身上を呼び起こさせた。ここから、反省会が異様な様相を呈していく。アシュラやユキコが、自分のことをかばってくれるように言った「子供たちと交流するのも人形劇の一環じゃないの?」

 それから人形劇のあり方について、巡回公演のあり方について、上級生新入生関係なく、喧々諤々の議論が巻き起こっていくのである。

 

 自分のほうは、もうどうでもよかった。今の自分の立場から、心の中で、"部外者…部外者…部外者…" 言葉だけがリフレインする。自分は偽者の部外者...その場にいられなくなって、青ざめた顔をして教室を一人外にそっと出て行く。ヌーボーとスルメが心配そうな顔をして見つめてくれていたのを覚えている。 

 

 学校を抜け出して細い夜道を抜けて、ひとり海の方に向かった。昼の明るい青い海と違い、夜の暗い暗い荒々しい白と黒の恐ろしいような海である。大海原に、黒い波が大きく被ってきて、足元に寄せては引いていく。"自分は何でここにいるんだろう?自分は今、何をやってるんだ!"

 ・・・時間が立って心が落ち着ついてきたので学校に戻ることにした。学校の二階の教室では、あかあかと明かりが灯り、議論の声がまだ響いていたが、さすがにそこには戻れない。一階の教室の片隅で、机の下に隠れるようにして大の字に寝転んだ。

 

 二階の教室では、何のために人形劇をしているのか、子供を喜ばせるためか、児童文化か、自分達の表現のためか、はてまた子供だけじゃなく大人も楽しめる人形劇を目指すんだとか、今後のてのひらの方向性を見出すような話合いがされていた。(今後の児童文化活動に非常に重要な議論だったと聞いています)

 反省会では赤シャツが出ていって帰ってこないのを心配し、大騒ぎとなって、近隣を探そうということになった。みんな懐中電灯を持って、暗い運動場、校舎周り、学校周辺、海の方までも探しに行ってくれた。行方不明者発生!しかし、捜索すれども見つからない!

 このとき実は、みんなが探してくれているの様子を校舎内の片隅で知っていた。窓のスリガラスに探す懐中電灯の明かりがチラチラと当たり、捜索する声が聞こえてくる。校舎内のこの教室にもやってきて懐中電灯で教室をさぐられたが、教室の隅に集められた机の下にいたので見つからない。みんなに心配させて悪いとは思ったが、もちろん出て行く気にはなれない。じっと天井を見つめ、自分の存在の孤独さと戦い、自分はこんなところで何やってるんだ!と再び自問自答を繰り返しながら、朝まで眠れぬ夜を過ごした。

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